試しに死んだら、生まれ変わってまた会いに行くね「月の満ち欠け」佐藤正午

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

本好き同士、毎月順番に一冊本を決めて一緒に読んで感想をシェアしているつぶあんさん(つぶログ書店)とのコラボです。

前回はつぶあんさん(つぶログ書店)のチョイスで、「トヨトミの野望」を読みあいました。

※私の感想はネタバレありです。

【オンナノ本ノヨミカタ】

https://sakamotodappantyu.com/archives/toyotominoyabou.html

【オトコノ本ノヨミカタ】

https://ytkglife.net/collaboration-book-review-toyotomi/

今回は、私のチョイスで、「月の満ち欠け」を選びました!

目次

静かで不可思議、そしてどこかノスタルジーな世界に引き込まれる美しい小説

<あらすじ>
あたしは,月のように死んで,生まれ変わる──目の前にいる,この七歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく.この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は,戦慄と落涙,衝撃のラストへ.

感想:★★★★★

美しいタイトルにシンプルな装丁。

思わず手に取った小説を「あたりだといいな」と読み始めました。

最初から最後まで温度が下がらずドキドキしながら引きこまれ、読書後は「いい小説に出会ってしまった」という満足感でいっぱいに。

いやぁ。よかった。小説って、素敵ですね。

静かで、忘れられない、誰にも言えない恋

久しぶりに小説を読んで、美しいぃいい!ともだえるシーンに出会いました。

歩き回って疲れちゃったね、と彼女の声が降りてきた。アキヒコくん、眠たいんでしょう。顔の表情までは見分けられなかった。いま立ち上がるべきか、立ち上がってどう答えるべきなのか迷っていると、瑠璃さんがそばへ来て隣にしゃがみ、肩を抱いた。眠る?と顔を覗き込んで訊ねた。三角の答えを待つつもりのない瑠璃さんは唇を寄せてきた。

それからふたりは朝まで眠らなかった。

P158

文字の羅列なのに、すごくドキドキした。

多くを語らないのに、だからこそなのか、美しいワンシーン。

作家の力量を体感したシーンですね。

そしてここも、短いのに、だからこそなのか、(このシーンの)主人公に一気に感情移入してしまった。

三角の思い込みがあっけなく崩壊したのは、最後にふたりで過ごした夜からたった一週間後のことである。瑠璃さんは地下鉄の電車に轢かれて死んだ。

P189

決して短い小説じゃないのに、メリハリを持って読めるのは、こういう心に刺さる部分の短い描写が上手いからかもしれない。

そこで一気に「なんで、どうして」という気持ちが膨らむ。

そこから、また読むスピードが加速していく。ハマる。

一つの恋がまた出会うまで

大事な人に会うために、生まれ変わる。

そんなことがあるとしたら……。

俄然、この本も読みたくなりました。

最初は、非科学的だと思っていた「うまれかわり」という現象を、本書を読み終わると信じたくなってしまう。

想いと魂の重さについて考えてしまう。

そして読んでいくうちに、再会を願う自分がいるのも面白い。

自分の大好きな人と魂が寄り添うことにどんな意味があるのだろう。

生まれ変わってまで、会うことが許されるのであれば、この人生の深みももっとたのしめるかもしれない。

大事な人を、もっと大事に、このターンだけでなく、繋がれるように想えるかもしれない。

そんなことを考えられる、壮大で、不思議で、ロマンチックですっごく素敵な小説でした。

【オトコノ本の読み方】

ロマンチックだったな~つぶあんさんは、どう読んだかな!

男性の感想もすごく気になります!

https://ytkglife.net/collaboration-book-review-shogo-satoh/

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1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。 転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。 家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。 2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。

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1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。
転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。
家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。
2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。

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