テスカトリポカからハマって出てる作品を全部読破し、待ちに待った新刊が10月20日に出ました。
販売日に書店に走る作品は久しぶり。
期待高まる中、翌日には読破してしまいました。
A面:はじまりは「飛行機が好き」だった
空の色以外はほとんど色のない物語。
とても印象的なのは、初めて飛行機に乗って、コックピットに行こうとしたら止められたというエピソード。
その登場後、少年に手渡されたカレンダーで、少年の人生が始まる感じがする。
たんたんと描かれているが、そのシーンは想像しただけですごく胸がアツい。
好きなものとの出会い。そして人との出会いが、人生を変えていく。ドラマだ。
そして、次のポイントは戦闘機との出会い。
高校生二人の旅、というワクワクしそうなトピックはハプニングによって暗雲がたちこめるけど、
その後み上げた空と、戦闘機との出会いは、もう、恋の描写だなと感じるほどに運命的だった。
人生が変わるような出会い。
そして、戦闘機も彼を選んだ。
飛行機くらいにしか乗ったことがないのに、描写力のおかげで、空に舞う快感と、Gの圧力を感じられるような体験ができた。
これが、読書の醍醐味だと思える、最高に早く、圧縮された世界の体験。
そこにまとわりつく護国と、蛇の概念。
読み終わるのがもったいないと思えるほどの良作でした。
B面:三島由紀夫の幽霊とすれ違うような作品
早く本を読んでしまったので、本の構想や背景を読み漁ると、本作は三島由紀夫に挑んだものであるというのを知りました。
私個人の三島由紀夫文学の印象は、本当に人間の体温や存在感を感じる、濃度の濃い官能のイメージがあります。
読んだだけで、ああ、この人はすっごいモテただろうな、男にも、女にもって、わかってしまうような。
だから、オマージュじゃなくて、挑んだのは面白いと、胸が高鳴りました。
作品に寄せて、スクラムを組むような挑み方ではなく、すごくすごく引いたところから、同じような濃度と、絡みつくような因果をまとわせる。
幽玄Fから、まだ読んでない三島文学を読破するという楽しみができました。
こういう光の当て方で、過去の作品はまた一段と輝いていくんだな、文壇って、こういうアプローチができるんだな、尊敬ができるんだなと。
つくり方にしても、官能の部分をカットして、戦闘機のフォルムに寄るように作ったというエピソードもぐっときました。
次回作も期待
作家のカラーや得意分野の中で踊るのも大好きなんですが、佐藤究の引き出しの多さ、挑戦も大きな魅力だなと感じます。
無骨さ、男くささ、思い切りの良さ。
そこにあてられて読んでいるときの気持ちよさ。
次回作も楽しみにしています。
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