【小説】「俺は生活を本当に愛したことが一度でもあったかしら」”命売ります”三島由紀夫

おばあちゃんちの本棚で見つけて手を出した一冊。

三島由紀夫、実はちゃんと読みきったの初めてかも。

後悔。

なぜ今まで読んでこなかったのか…

すごく面白い一冊やった。

癖があるのに、わかりやすくておもしろい。

重いテーマなのに、軽やかに扱う感じが◎。

万人受けする正統派。

例えるなら…

目次

【いいところの幕の内弁当】


あらすじ

自殺に失敗し、「命売ります。お好きな目的にお使い下さい」という突飛な広告を出した男のもとに、現われたのは? 【解説: 種村季弘 】目覚めたのは病院だった、まだ生きていた。必要とも思えない命、これを売ろうと新聞広告に出したところ…。危険な目にあううちに、ふいに恐怖の念におそわれた。死にたくない―。三島の考える命とは。

感想:★★★★

いやー、もと早くよむべきやったな。


これはすばらしい女でね。おっぱいがこういう風に両側へ、仲の悪い二羽の鳩のようにソッポを向き合っておる。唇もそうだ。唇も上下へ、甘だるく、ソッポを向き合っておる、あの体のすばらしさは何とも言えない。足がまたいい。神経質に細すぎる病的な足が流行りのようだが、彼女の足は、豊かな腿からかすかにかすかに足首のほうへ細まってゆく具合が何ともいえない。尻の恰好も、もぐらがもちあげた春の土のようなふくよかないい形だ。

P14  命売ります

何この描写!!!

いやー、流れるようになめらかなのに、男らしい言い回し笑

もぐらがもちあげた春の土のようなふくよかないい形

男の人はこのお尻にピンとくるもんながかな…

『人が見たら、孤独な人間が、孤独から救われたいあまりの、つまらん遊びと見えるだろう。だが、孤独を敵に廻したら大変だぞ。俺は絶対に味方につけているんだから』

P51 命売ります

羽仁男のなげやりが一回転して潔い決断をしていろんな修羅場を潜り抜けていくところから、心がだんだん変わっていく様子も見もの。


「あたし、マチ子。あんた、あたしと寝たいんでしょ」

と女が言った。

「まあ、そんなところかな」

女は大人ぶってみせて、お腹のへんで笑った。

中略

マチ子は、あくびをしてから、自分でスカートの横のホックを外して、

「あたし、ちっとも寒がりじゃないんだから」

と言った。

「そうだろうよ。コートも着てないから、体が燃えてることはわかってたよ

「いやな奴。キザね、あんた。あたし、キザな人、嫌いじゃないわ」

P87 命売ります


『俺は生活を本当に愛したことが一度でもあったかしら』

と羽仁男は思った。

 その点になると、からきし自信がなかった。今、なんだかそれを愛しかけているような気がするが、体力が衰えて、頭が弱っているためかもしれない。

P117、118 命売ります


いずれにしろ、今は「命売ります」の商売の、いい中休みのチャンスだと考えられた。ここでしばらく、のんびり贅沢な暮らしをしてみて、そのままずるずるべったりに生きたくなったら生きてもいいし、また死にたくなったら商売を再開すればいいのである。

 こんなに自由な心境はなかった。

 結婚なんかして一生縛られたり、会社勤めなんかして人にコキ使われたりする人間の気が全く知れない。
P164 命売ります


つまり、羽仁男の考えは、全てを無意味からはじめて、その上で、意味づけの自由に生きるという考えだった。そのためには、決して決して、意味のある行動からはじめてはならなかった。まず意味のある行動からはじめて、挫折したり、絶望したりして、無意味に直面するという人間は、ただのセンチメンタリストだった。命の惜しい奴らだった。

P187 命売ります


第一に、君は病気なんかじゃない。それがまず、甘えた空想だ。

第二に、決して君はキチガイなんかにならない。今の君の考えていることがすでに子供っぽいキチガイだから、キチガイがその上キチガイになることなんか決してできない。

第三に、キチガイになることを怖れて死ぬ必要なんて全然ない・

第四に、君の命を買う奴なんか一人もいない。

中略

いいか、玲子。僕は、人の命を買う人間、しかもそれを自分のために使おうという人間ほど、不幸な人間はいないと思っている。それは人生のどん底のどん底で、僕のお客はみんな可哀想な奴だった。そういう奴らだから、僕も喜んで買われてやったんだ。君みたいに、三十歳の子供で、今夜処女を失って、見当はずれの空想で人生に絶望して、その実、人間のドンづまりに来ていない女なんかに、僕の命を買う資格はないんだ」

P194、195 命買います

羽仁男、COOL!!!!

男と女の自由をめぐる思惑も考えさせられる一冊。


三島由紀夫作をもっと読んでみようと思えました。

おすすめです。

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プロフィール

高知出身の1986年生まれ(五黄の虎)

18歳で脱藩、京都、金沢、富山高岡、能登半島住の転勤族。北陸か高知に大体おります。いつの間にか本籍は新潟県佐渡島に。一児の母。

元肉食系広告代理店勤務だったので、恋愛やお店のPRに関してのアドバイスが得意。

フェイスブック、ツイッターのメッセージ、そしてコチラでもライティングやインタビュー依頼、ブログでやってほしいこと受け付けます。


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さかもと みき 作『坂本、脱藩中。』はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。








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1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。 転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。 家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。 2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。
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この記事を書いた人

1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。
転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。
家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。
2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。

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