結婚が終わりをむかえるときとその後。男と女は何を感じ、どう生きていくのか「夢も見ずに眠った。」絲山秋子

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

本好き同士、毎月順番に一冊本を決めて一緒に読んで感想をシェアしているつぶあんさん(つぶログ書店)とのコラボです。

前回はつぶあんさんのチョイスで、「ある男」を読みあいました。

【オンナノヨミカタ】

死んだ夫は他人だった!?実在するのに名前のない男を追う「ある男」 平野 啓一郎

【オトコノヨミカタ】

愛には過去が必要か?:平野啓一郎『ある男』【コラボ書評】

今回は私のチョイス。

学生時代からずーっと好きな作家さんの新書を選びました。

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車と場所に思いをはせながら人生の変化を味わう

【あらすじ】夫の高之を熊谷に残し、札幌へ単身赴任を決めた沙和子。しかし、久々に一緒に過ごそうと落ち合った大津で、再会した夫は鬱の兆候を示していた。高之を心配し治療に専念するよう諭す沙和子だったが、別れて暮らすふたりは次第にすれ違っていき…。ともに歩いた岡山や琵琶湖、お台場や佃島の風景と、かつて高之が訪れた行田や盛岡、遠野の肌合い。そして物語は函館、青梅、横浜、奥出雲へ―土地の「物語」に導かれたふたりの人生を描く傑作長編。

感想:★★★★★

贔屓の作家だから、いいんだけど敢えて言わせてもらうなら、今回も最高でした。

そして、この現場の地方の道や風景が広がるイメージは、絲山さんの文体に触れると思い出すんですよね。

過去作品に出てきた場所のイメージまで。

土地と思い出がリンクしてこころに景色が残る

今はこんな風に楽しむこともできるんですね。

今回の小説で自分の頭の中にリアルに浮かび上がってきたのは琵琶湖沿いのドライブ風景。

ついグーグルマップをクリックしちゃいました。

自分も何度も通った場所だったし、2人のどこにも行けないような感じが情景ありで浮かんできて過去に戻った気持ちになりました。

一緒に読んでくれるつぶあんさんは岡山の方なので山陰の情景がうかんでいるんじゃないかなーと思いながら読んでいました。

絲山さんの作品が、ずっと心に残り続けるのは、繊細で正確な描写でその地域の情景が浮かび、それを見ている主人公に自分が乗り移って、景色と気持ちをセットで感じるからかもしれないなと思いました。

ちょっと無神経な元夫と繊細で一生懸命な元妻

ある一組のありふれた夫婦が、どんどんズレてって、「ああ、だめだな」というところまで行って、そして、お互いの人生が回りだす。

嫌いになって別れたわけじゃない夫婦というのは、不思議だなと思った。

色々、残っている。

それが愛おしくもあるし、どうにもならないこともよく分かる。

「寛ちゃんに縒り戻せって言われた」
高之が言った。
「なんて言ったの?」
「たしかにケンカして別れたわけじゃないからね。でも俺、今困ってるっていうほどじゃないし」
このひとのこういうところが嫌だったのだ、と沙和子は思い出す。無神経というかなんというか、他人から見れば鷹揚な感じかもしれないが―そう思ってから、自分も他人なのだと思い出す。
「私も言われたけど、でも高さん、そんなふうに言う?」
「ごめん。どうしても怒らせちゃぅんだな。沙和子さんみたいに繊細じゃないんだよ」
でもね高さん、こんなに怒れるひとはほかにいないよ、と沙和子は思うのだ。それに、たとえばお腹を壊したり、生理だったり、そういうことも含めてつき合える男のひとというのは、滅多に現れないんだよ。と沙和子は思う。
 かつては結婚することも一緒に暮らすことも、ずっとおおらかだったのだろう。喩えが変だけれどもし結婚が就職活動だとしたら、昔は紹介だけで内定が出た。履歴書もごく簡単なものでかまわなかった。今はエントリーシートを書くのが大変だ。それに筆記試験も小論文も適性検査も求められる。
そうやって見つけた最適解は、本当に最適なのだろうか。
家という制度がなくなり、子供もいなければ、一緒に住んだり、ほかのひとを愛しませんと誓うことの意味も変わる。

P293、294 沙和子さん、行っておいで

これ、私がたまたま婚活中の友達に言ってた例えそのまんまでびっくりした。

絲山さんの言葉は、凄い心理をついてくるんだけど、ほぼほぼ情景の描写で、気持ちがたまにぐっと入るから重くないのかも。

物語の最後ほうのの言葉は、正直涙が出そうになった。

でもできれば読んで欲しいのでここでの引用は控えます。

ただ、読後は、なんというか、長いうつうつとした出口のない線路や道路を走っていった先で、開けた場所に出て、気持ちがクリアになったような気分になりました。

白黒はっきりしている部分以外が大事なのかもしれない

人生の結果だけ見ればわかりやすいけど、人の心が動き、どう感じ、どう、響いて、何を選んでいくのか、そういうのは、もっと丁寧に見るべきだなと思わさせられた。

それは私がいつも恋愛記事をわかりやすく書くことを仕事にしているから余計感じたのかもしれない。

そして、同じ言葉を使っても、小説家はすごいそういう丁寧に物事をあつかう仕事だなぁと感服してしまった。

いい小説は、やっぱりいいなぁ。

オトコノホンノ読ミ方

岡山から始まり、岡山で終わるこの一冊、つぶあんさんはどう読んだのかなー

オトコノホンノ読ミ方、つぶあんさん(つぶログ書店)の書評はこちらからどうぞ!

【コラボ書評】愛おしさと切なさ『夢も見ずに眠った』【絲山秋子】

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