ソラニンから11年と帯に書かれていて、ということは、それ以前の「すばらしい世界」からは何年たったのだろう…
多感な学生時代の時期に何度も、何度も読んだ「すばらしい世界」は私の漫画の世界を広げてくれた。
そしてメンヘラ路線をたどりつつ、ソラニン、おやすみプンプンなどを読み漁り、とうとう漫画に出てくる影と艶のあるブスにもなり切れず、ふつーに結婚して子どもまで生まれた私はまた、浅野いにおの漫画を手に取った。
許されたい、認められたい、満たされたい、ちゃんとしたい…大人の闇墜ち
<あらすじ>
浅野いにお、衝撃の新境地へ–ある漫画家の、脇目もふらず駆け抜けてきた連載が終わった。
久しぶりに立ち止まった自分に残されていたものは、残酷なまでの“空虚感”だった。
大切な存在ほど信じ切れず、束の間の繋がりだけに縋り始める日々―――
漂流する魂が着地した時、男の本当の姿が現れる。
浅野いにお、極限の最新作。
感想:★★★★
結婚、30代、子ども、仕事、の大人の葛藤を感じる一冊。
調子がいい時もあるし、悪い時もある。
一生懸命してきた仕事が一区切りついた時、自分で作ったプレッシャーと周りの期待と、自分の可能性の中で揺れる。
人生の満足感や幸せが、すくって笑った瞬間消えて、また探さなければいけないものだという現実を思い知ります。
実際、そうだし。
大人になると、もんもんと猛った思いも消えかけてて、その熱意や気持ちに対して冷めて冷静な自分もいる。
自分が、自分がで回らないことに、気づいてしまっている。
アーティストや漫画家みたいな表現者は、それでも自分の中にあるものを、「売れるもの」と勝負しながら出さなければいけないからすごくしんどいと思う。
男は自分が弱ったら過去の女を思い出してノスタルジーするのが好きだな
物語は最初から、逃げ場として、想いを馳せる「ネコ目の女」をキーにしている。
自分を傷つけ、相手を傷つけ、どこにもいけなかった思い出を反芻して食う牛のようにもしゃもしゃして物語は進む。
その過去とは対面しないけど、そのイメージにはすがっているところがリアル。
元カノに連絡したくなるのって、自分が行き詰った時か、わかりやすく自信を持てた時ですよね。
その中に、答えや自分の思う満たされる気持ちなんてものはないのに。
現実で満たされないから、過去の自分を払しょくしたいと思ったり、また同じように受け入れてほしいと思うのは、人の弱さなのかもしれない。
それを出せるだけ、その人の人生は幸せなのかも。
自分を満たすものは、自分が向き合うことでしか得られない
割とふわっとした逃避でどこまで行ってしまうのか不安になる物語ですが(だから一気に読んでしまう)、結局主人公は、自分なりにあがいて、登っていく。
昨今の破滅型と比べて、すっごく重いし救いがないと思った物語は好転していく。
そこにほっとしている自分もいる。
やっぱり、大人になってしまうと踏ん張りどころもわかるし、人を傷つけても前にすすめないし、逃げても物事が好転しないのが分かる。
それがすっごくリアルな一冊でした。
おもしろかった~!
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