灼熱の夏に死にゆく2人の子どもとその母と祖母の人生「つみびと」山田詠美

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

本好き同士、毎月順番に一冊本を決めて一緒に読んで感想をシェアしているつぶあんさん(つぶログ書店)とのコラボです。

前回はつぶあんさんのチョイスで、「存在の耐えられない軽さ」を読みあいました。

※私の感想はネタバレありです。

【オンナノ本ノヨミカタ】

https://sakamotodappantyu.com/archives/book-41.html

【オトコノ本ノヨミカタ】

https://ytkglife.net/collaboration-book-review-kundera/

目次

鬼母は、わたしかもしれない

<あらすじ>

灼熱の夏、23歳の母・蓮音は、 なぜ幼な子二人をマンションに置き去りにしたのか。
真に罪深いのは誰なのか。

あの痛ましい事件に山田詠美が挑む。
虐げられる者たちの心理を深く掘り下げて、日経新聞連載時から話題を呼んだ、迫真の長編小説

感想:★★★

夏に、2人の子どもを育てながらこれを読んでしまったからか、どうも鬱々としてしまった。

読み終わっても、話が続いているように感じるのは、私の育児が続いているからかもしれない。

幸せと絶望はセットでやってくる

出会い、出産、結婚、子育て。

多くの女性やメディアの手でキラキラとコーティングされたこれらの人生の節目。

体験してみると、その一瞬のキラキラに対して「しんどい」「つらい」ことの比重の大きさに押しつぶされそうになる。

そんなこと、誰も教えてくれなかった。

全部、いいものとして、教えられてきた。

最初に言うけど、子どもを殺した鬼母である蓮音にはめちゃくちゃ共感した

私が蓮音にならなかったのは、「まわりの環境」のおかげ。

以上だ。

これを読んで、自分が体験したかもしれない絶望を垣間見て、現実の私は動けないでいる。

弱い者ほど助けてと言えない

子どもを置き去りにして、死なせた鬼母も、小さいころ壊れかけた母親に捨てられた。

その母もまた、小さいころひずんだ家庭の中で性的虐待を受けている。

親の関係性のなかで声をあげられない子は「助けて」という方法を学ばずに大人になる

蓮音と私の差は、「助けてよ」が言えるか言えないかの差だけだ。

でも、その差は果てしなく大きく、結果を変えてしまう。

時々見えるキラキラした家族の生活が、本当に一瞬で、悲しくて、悲しくて辛い。

子どもを甘やかすなの線引き

子どもは自立してしかるべき。

一方、子どもはいつまでも子どもと親は思うものらしい。

私も弟の家に干渉して「自立しろ」と言ったことが数回ではない。

同じ親から育っても、ある程度自立してしかるべきと思う私と、収入がままならないまま子どもをつくる弟、考え方ですらまったく違う子ができる。

たとえば、手を差し伸べないのを徹底すれば、弟夫婦は、この小説に近いところまで行ったかもしれない。

もしかしたらそれなりにうまくやっていたかもしれない。

でも、親から見て足りないところが多く、手を差し伸べるしかない、と私も思う

その上で、ある一定のルールや関わり方をもたないと、「自立心」は更に育たないので全部を見るのは反対。

ただ、命は、できた瞬間から動き出して止まらない。

特に母親は、面倒をみるか、稼ぐか、どっちも並行することなんて無理に近い。

それが義両親とのかかわりになると、他人故に関わり方の正解なんてないように思える。

じゃあ誰が罪びとなのか

不思議と、これを読むと、

「蓮音は悪くない」

って言ってしまいそうになる。

もちろん、蓮音は悪い。

でも、嫌悪故にみて見ぬふりをした夫、その親、蓮音の父親、声をかける勇気のなかった実母も悪い。

同じように、みんなが悪者になりたくなかったのだ。

みんなが当事者になりたくなかったのだ。

「かわいい子を」って言いながらそれらを責める人は、安全地帯からものをいう。

じゃあ、誰が悪かったのか。

やっぱり、わからない。

ただただ悲しい。

子どもの顔を見よう、話しをしよう

私がこの本から得たのは、「つみびと」探しではなかった。

山田詠美の子どもの視点の描写で見えた世界は私をはっとさせた。

小さいことでも、ちょっとしたことでも、子どもの心に、記憶に溜まるできごと。

それと向き合っていこうと思った。

私も、蓮音と同じように自分を認めてくれるものが欲しい。

そしてそれは仕事で、旦那の休みはほぼ家族で過ごさずに仕事をしていた。

家族のためという大義名分をつけた「自己肯定のための仕事」。

仕事は、社会的にもお金的にも自分を肯定できる。

母親は、自己肯定感が、著しく低い。

それにより添って欲しい。

誰が悪い、誰が……じゃなく子どもに、母親に寄り添って欲しい。

認め、受け入れ、話を聞くだけでいい。

夫なら、パートナーとして同じことをできるだけして欲しい。

重荷の擦り付け合いではなく、「子どもの成長」というエンターテイメントを二人で楽しんで欲しい。

そんなことを考える一冊でした。

オトコノホンノ読ミ方

すごーく重い本にしちゃったな…笑

つぶあんさんがどう読んだか気になります!
https://ytkglife.net/collaboration-book-review-tsumibito/

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1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。 転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。 家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。 2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。
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この記事を書いた人

1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。
転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。
家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。
2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。

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