結婚して家をのっとられ、ゆっくりゆっくり妹が殺される「井戸の星」吉行理恵

井戸の星

基本決まった作家のものばかり読むのですが、たまにジャケ借りしちゃいます。

昔の作品すぎて、なかなか見つからなかったし情報もなかったけど、なんとなく出会って読んでしまって心に残る不思議。

やっぱり本は面白い。

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暮らしの中でいやな流れが止められない時の絶望

あらすじ

妹が結婚し、実家に暮らしていた内に両親がなくなり、夫の両親が家に転がり込んできて、徐々に家をのっとられ、妹を壊され、ついに妹は死んでしまう。
幸せのビジョンの向こうは逃げられないアリジゴクのような日々だった。

感想:★★★

人が人にあまり見せない家のどよーんと重い、どうにもならない感じ。

「不幸」の話がこの小説には詰まっていました。

でも読みやすかったし読後感が重くないのは、「いやだけど巻き込まれている」人の話で、主要人物はまともで、周りの友人や家族に振り回されて「不幸」になってしまうからなのかもしれません。

・家を乗っ取る夫と義母
・人の恋人を取ろうとする女
・嘘つきのパトロン
・若くして死んでしまった人を取り巻く人々

女のいやーなところが詰まった本でした。

心に残るのは、「わかる」と共感してしまうから。
こんな女、いる。
こんな義母、いる。
こんなやな友達、いる。
最低な夫、いる。

そして、いい人も、いる。

「眠り薬、入ってない?」
「入ってないわよ、ただの牛乳よ」
牛乳を飲むと、章子は喋りはじめた。
「一ヶ月ほど前に、眠り薬を飲まされて、気が付いたら、入院させられていたの……妊娠していることが分かったときから、大塚とお義母さんに隣のご隠居さんの子にちがいないってさんざん責められたのよ、子供を堕ろせと言われたので、ことわったら、『それじゃ、駅かどこかの階段でころべよ、階段から墜ちれば流産するよ』と大塚が言ったの……」

井戸の星 P28

あとがきを読むと、さらに作者はこの本に出てくる人のようでした。
不幸がまとわりついてしまう才能があるような人。

筆者は、ツル子という女を3年ほどの間に何度もいやな女としていろんな物語に登場させており(この本にも出てきた、主人公の夫とできてるってうそをついたり、大事にしていたものを勝手に人にあげてしまう本当に嫌な女だった)、その女の呪いで体に水泡がたくさんできたとあとがきでかいてておもしろい。

多分、不思議ちゃんなんだろうなぁ。
不幸を身にまとう不思議ちゃんって惹かれてしまうんやよなぁ。

「恵美はお誕生日間近に、力三は生まれたとき一声泣いたんだけど…。でも二人とも戒名をつけたのよ。恵美は二十年前に産んだ子なの、お父さんも若かったから、恵美が欲しがるので、塩昆布を食べさせて、お腹を壊して死んだのよ」

トラヴィアタの鏡 P249

思い返してみればこの一冊の中で、多くの人が死んでしまう。

ころっと、死んでしまう。

半分くらいは、殺されているかも。

普通に生きたいのに、巻き込まれて、不幸になっていく様を垣間見る話が多い。

昔は、今よりもっと人が死んでいただろうし、これがリアルだったのかもしれない。

普通の人が、意地悪な人の思惑のために死ぬ、もしくは殺される。

どんよりした脱力感が残る一冊でした。

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