56年前の日本でも人は同じように悩み、こじらせてる「桜の森の満開の下・白痴・他十二編」坂口安吾

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

本好き同士、毎月順番に一冊本を決めて一緒に読んで感想をシェアしているつぶあんさん(つぶログ書店)とのコラボです。

前回はつぶあんさん(つぶログ書店)のチョイスで、「夏物語」を読みあいました。

※私の感想はネタバレありです。

【オンナノ本ノヨミカタ】

嫌いだけど親友みたいな女友達のような本「夏物語」川上未映子

【オトコノ本ノヨミカタ】

子どもが欲しいということ:川上未映子『夏物語』

今回は私が新潟に引っ越すということで、坂口安吾でも読むかと、このチョイスです!

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捨てきれない純粋な気持ちとままならない葛藤が迷い込む迷宮

<あらすじ>
桜の森の満開の下は怖ろしい.妖しいほどに美しい残酷な女は掻き消えて花びらとなり,冷たい虚空がはりつめているばかり──.女性とは何者か.肉体と魂.男と女.安吾にとってそれを問い続けることは自分を見つめることに他ならなかった.淫蕩,可憐,遊び,退屈…….すべてはただ〈悲しみ〉へと収斂する.(解説=七北数人)

感想:★★★★

自分で選んだんですけどね、風博士からはじまる序盤に感じたのは、「読みにくい」ということ。

これが、私が巨匠を敬遠してしまう理由ですよね。

高校時代もトライしたんですけど、数点読んで挫折しました。

で、33歳になって再トライしたんですけど、クセあるぅうう!って思いましたよね。

でも、複雑な葛藤や、狂い方とか、そういうの、大人になった分、やはり理解できるところも増えてて、読んでよかったなと思いました。

14編ありますが、今回は白痴にフォーカスしてかきます。

評価される作品は切れ味のいい刀の様に錆びない

特に、白痴……今見るとすごかった。

高校時代、妖艶な雰囲気につられて、浅野忠信が出てたから、映画をみたんです。

もう、わけわからなかったんですよね。

本当につまらなかった。

でも、1シーンだけ、浅野忠信が言ったこのセリフに心をぶち抜かれました。

死ぬ時は、こうして、二人一緒だよ。怖れるな。そして、俺から離れるな。火も爆弾も忘れて、おい、俺達二人の一生の道はな、いつもこの道なのだよ。この道をただまっすぐ見つめて、俺の肩にすがりついてくるがいい。分ったね
女はごくんと頷いた。

P89 白痴

多分演技力もありきだけど、言葉の力を感じたんです。

こんなこと言われたら惚れるなって。

未だにプロポーズとかよりも運命をゆだねたくなるセリフだと個人的には思ってます。

そして、今一度、大人になってこの小説を読んだら、刺さる部分がめちゃくちゃあって心が震えました。

だが、気違いと常人とどこが違っているというのだ。違っているといえば、気違いの方が常人よりも本質的に慎み深いぐらいのもので、気違いは笑いたい時にゲタゲタ笑い、演説したい時に演説をやり、家鴨に石をぶつけたり、二時間ぐらい豚の顔や尻を突ついていたりする。けれども彼等は本質的にはるかに人目を怖れており、私生活の主要な部分は特別細心の注意を払って他人から絶縁しようと腐心している。

P60 白痴

キレッキレ。

そして、一文が長い。

私はあなたを嫌っているのではない、人間の愛情の表現は決して肉体だけのものではなく、人間の最後の住みかはふるさとで、あなたはいわば常にそのふるさとの住人のようなものなのだから、などと伊沢も始めは妙にしかつめらしくそんなことも言いかけてみたが、もとよりそれが通じるわけではないのだし、いったい言葉が何物であろうか、何ほどの値打があるのだろうか、人間の愛情すらもそれだけが真実のものだという何のあかしも有り得ない、生の情熱を托すに足る真実なものが果してどこに有り得るのか、すべては虚妄の影だけだ。

P70 白痴

その文学の流行りとか、見せ方とか、作家のクセがあるんだろうなって思う。

でも、2020年ライターをしてわかりにくさをさけるために、長い文は細かく調理して出してる身としては、自由と、個性と、あと、文の力強さを感じて嫉妬しました。

ああ、ながいけど、ぐっとくるし、だからこその迫力もある。

不安と葛藤などの消えてくれないもの、読んでて感じたのは中二病風な心の葛藤でしたが、それがリアルですね。

悩みと、一瞬浮いては消える熱と、そしてなげやりな未来には、今のご時世もあってより共感しました。

男心研究書としても優秀

そして他の話もそうですが、「女」への感情や向き合い方がすごく勉強になる。

男があえて言わない卑しさや、嫉妬や、かっこわるさ、そういう女に分かりにくい男の気持ちが詰まってる。

あえて知りたいかと言われると、「めんどくさっ」って思ってしまう部分もあるけど、それ含め、面白いなとも思った。

関係性においても、キラキラしてない男と女の生々しい生き方に、多分33歳の今だから共感できるんだろうな。

入り口は読みにくい、からはいったけど、引き込まれる話てんこもりでした。

【オトコノ本の読み方】

私がよく選ぶ女々しいの逆、あまり人に見せたくない、女に対しての男々しい感情が良く見えた作品の多い一冊。

つぶあんさんはどう読んだのかな。

【コラボ書評】文学によって生と肉体を照らし出す:坂口安吾『白痴』ほか

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1986年高知生まれの五黄の寅年、一児の母。 転勤族の妻で今は佐渡島のターン。
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