【小説】名前を失った男と自由になりたがるかつての彼の所有物たち。狂っていくのは、男か、世界か”壁”安部公房

安部公房は砂の女でお世話になって以来、久しぶり。

読書友達に借りたので、久しぶりにお目にかかりました。

シュルレアリスム。

ぐるぐる不規則に振り回されるような世界観は、日本語なのに、海外で出会う新しいお酒みたい。

翻弄されて、夢なのか小説なのか何度も曖昧な境界線を行ったり来たりしました。

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【カリブ海で出会ったラム酒の様。
若さや、割り方、黒糖で変幻自在。
濃い中に潜む癖になる甘さの虜】


ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。


感想:★★★★

面白かったです。

就寝前に読んでたのですが、一日の終わりに違う世界にワープするみたいでとても楽しみでした。

名前を無くした男がどんどん自由になっていくものを失っていく、と、同時に、自分の管理下にあったものが意思を持ったり、行動をおこしたり、して思い通りにならないようになっていく。

まるでいつも使っている「道具」=名前、眼鏡、ベルト、万年筆などなど、使える道具を自由に使っていたのが魔法で、その魔法が切れたみたいに男は不自由になっていく。

 

「おれは映画の時だけ利用されて、女の子に逢う時は全く無視された。おれにだって見る権利はある。おれはすべてを見る自由が欲しいんだ。」そう叫んだのは眼鏡でした。「おれは一度も腹一杯になったことがない。腹がぎ

ゅうぎゅう言っているのに、むりやりふりまわされてこき使われるんだ。しかもおれの働きは完全に搾取されてしまう。おれはおれの書いたものを自分のものにしたいんだ。」そう叫んだのは万年筆でした。

中略

「一方的な搾取……妥協はない!」「そうだ、われわれ物質は主体を恢復しよう。」「生活権を奪取するんだ。死んだ有機物から生きている無機物へ!」

P72、73 第一部 S・カルマ氏の犯罪より

平面的な物語じゃなく、ページをめくるとらせん階段で降りていくような、隠し扉から違う世界へ行くような物語展開なのに引き込まれるように読んでしまう。

酔ってくる様な感覚。

でも頭の中では克明に、再生される。

舞台がくるくる変わる演劇を見ているみたいに。

第二部のバベルの塔のたぬきも面白かった。

影をとられた男が、透明になって、たぬきを探すうちにたぬきに人生をのっとられそうになる話し。

スリリングで臨場感があって、ことばの危うさというか、詩人として生きることの怖さを書いていました。


「言葉の遊戯だ!」

「そうさ、君は言葉の遊戯が現実化することをねがっていたんだから……。」

「理屈だよ。君、たしかにぼくは言葉の遊戯におぼれていた。しかし、こんな目にあうとは思っていなかったからねえ。ぼくは、知らなかったんだ。君、たのむよ、本当に、知らなかったんだ。」

「おかしいね。何故いまさら…ぼくの考えでは、君は今の状態を少しもくやむ必要はないと思うんだ。透明になったということは素晴らしいことじゃないだろうか。一般に、あの人は影がない人だという時、何を意味しているだろう?明るい、純粋な性格の持ち主だということではないだろうか」

P172 第二部 バベルの塔の狸

第三部 赤い繭は、魔法のチョークが印象的でした。

狭い部屋で、日が当たるまで書いたものが具現化する魔法のチョーク。

なんでも具現化できて、世界をつくる権利、それを手にしたアルゴン君。

彼が悩んだ末に書いたものがイブだった。


「死…死をつくるの。世界をつくるには、まず物事のけじめが大事でしょう。」

P248 第三部 赤い繭

あーおもしろかった。

万人うけするものではないかもしrないけど、

まるで自分が知っている特別な洋酒のような、しかもいろいろな産地や飲み方で楽しめるような感じ。

ほかの作品も気になってきました。

もしおすすめあれば教えてください♪

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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1986年高知生まれの五黄の寅年、一児の母。 転勤族の妻で今は佐渡島のターン。
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