欠陥人間たちの見る美しく苦しい人生「拳闘士の休息」トム・ジョーンズ(訳:岸本佐知子)

舞城王太郎の翻訳本、コールド・スナップを読んで、寒波のことをコールドスナップと英語でいうことを知ったさかもとです。

この翻訳本、とても舞城らしさがでていました。

弱さを抱えながら生きていく大人たちのキラキラしない人生「コールド・スナップ」トム・ジョーンズ(訳:舞上王太郎)

それは彼独特の言葉づかいだけでなく、家族の悲しみや切なさや、やりきれなさ、強さと弱さの間や、イカレた人の突破感とかそういう私の大好きな部分が出ていてドキドキしながら読みました。

そして、舞城ファンである私は、ちゃんとトム・ジョーンズを掴めているのかなと不安にもなりました。

さかもと
だって、これ、洋書版舞城じゃん…

って。

そんなわけで、トム・ジョーンズが出している本の3本のうち1本目の舞城王太郎じゃない翻訳本を読むことにしました。

私は、トム・ジョーンズと会えるのか…また、洋書版舞城王太郎と会ってしまうのか…

スポンサーリンク

ボクシング、戦場、薬と恋…生きていく熱量が濃いガツンと来て切ない短編集

<あらすじ>
心身を病みながらも疾走する主人公たち。冷酷かつ凶悪な手負いの獣たちが、垣間みる光とは。村上春樹のエッセイにも取り上げられた、O・ヘンリー賞受賞作家の衝撃のデビュー短編集、待望の復刊。

感想:★★★★

ん~、びっくりしました。

コールドスナップも翻訳本としてはきっと相性がいいんだろうなと思ってましたが、正直岸本佐知子さん、最高だった…

そりゃ称賛されるわ…舞城王太郎よりも、少し読みやすく、かといってトム・ジョーンズの葛藤や混沌とした世界観、そして気持ちいいまでの疾走感が出ていました。

2冊目のコールドスナップから読んだのですが、コールドスナップに出てくるだろう主人公も少しかぶっていて、両方読んでよかった。

アドマジックの話はコールドスナップでも印象的やったけど、こっちの話も情景が浮かんできて、すごかった。

ボロボロの馬が美しく見えたのは岸本佐知子さんの訳が素晴らしいからやと思う。

あと、出版社に勤める恋人に時計をプレゼントして堕胎する女の話。

あれ、舞城王太郎が訳したらどんなになるのかなと身もだえた…

1作目の拳闘志の休息の方が恋愛話が濃くて、この熱さと冷めた時の寂しさとかは舞城王太郎の他の作品でもよく感じるから、トム・ジョーンズと舞城王太郎が魂の双子っていう例えはまんざらでもないなって、岸本さんの翻訳読みながら思った。

そして私は、トム・ジョーンズが好きなんやっていうのもよく分かった。

トム・ジョーンズを舞城王太郎が舞城王太郎っぽく訳したわけでもなければ、洋書版舞城王太郎がトム・ジョーンズでもない。

舞城王太郎がトム・ジョーンズが影響を受けた作家のひとりかなとは思ったけど、トム・ジョーンズの世界はトム・ジョーンズの世界でしかるべき翻訳家が訳したら最高なのもよく分かった。

痛いのにきれいな物語たち

●拳闘士の休息

ヘイベイビィの話。

友達をからかったのが許せず手を出して相手の頭がちょっとイカレる。

そして最後は自分もイカレる。

●ブレーク・オン・スルー

幻想のような、ジンクスのような死の手前で感じる紫の領域を感じる兵士の死と生のギリギリの話。

ベトナム戦争の戦場での話。
ギリギリで生き延びる主人公の描写に読みながらもドキドキする。

死ぬのは自分かもしれない。
過酷な中で壊れていく人間の強さと弱さを垣間見る。

●黒い光

精神病棟で未来の日記を書く兵士の話。

キャラみんな濃い。

●ワイプアウト

兄の家に転がり込んだごろつきの医者の話。

家庭が破たんしても、それをそのまま続けることがなんとかその形を保つために大事なのかもしれん。
そして恋は、一瞬の花火の様に上って終わる。

プレイボーイっぽい話。

●蚊

思い出したら書きます。

●アンチェイン・マイ・ハート

ボカッシオというダイバーの彼氏に熱を上げる女の話。
すごい良かった。

ひげを剃った顔が幼かったから、身ごもった子を堕胎することを決めたのも、変にリアリティがある。
恋は崇拝。
そのひげを剃った顔は、少し恋が冷めるサインでもあった。

●“七月六日以降、当方自らの債務以外、一切責任負いません”

美しい母を持った息子のぼやき。

糞みたいな男は男でも軽蔑するよね。
でも、それを見捨てん女もおるんよね…

●シルエット

ウィンドウといううだつの上がらない少年がビッチに恋をしたことから始まる物語。

物語はどこまで行っても冴えない。
ハッピーエンドは来ない。
でも、ビッチを諦められない。

念願の結婚生活も、家族も、笑えないほど悲惨な結果になる。

でも本人の生き方や感じ方はきっと周りと違う。
惨めは惨めやけど、貫くっていうのも難しい。

●わたしは生きたい!

ガンになったおばあちゃんの話。
人が生きたいと強く思う時の鬼気迫った感じがすごい。

●白い馬

記憶もパスポートもなく、札束だけポケットに一杯入っている「アドマジック」の話。

海辺で死にかけた馬を助ける。
根拠のない不思議な衝動が強くて印象に残る。

お金は便利な道具としてとても有効。

●ロケット・マン

アル中のもとチャンピョンとその弟子の話。

アル中の方に感情移入してしまった。

3冊目、早く出てほしい

かいつまんだけど、本当に言葉のチョイスや訳し方がよかった。

コールドスナップよりすんなり読めたし。

本当に読んでよかったです。

3冊目は舞城王太郎が訳すらしいけど…いつかなぁ~

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です