大人になるほど大事なものを忘れて生きてしまうのはなぜだろう「風に舞い上がるビニールシート」森絵都

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

…11本目になりました。

後1冊でこのコラボも1年…すごい。

一緒の本を読んでくれるのは本のプロつぶあんさん(つぶログ)です。

前回は翻訳本のコールド・スナップを一緒に読みました。

【つぶあんさんの書評】

人生で唯一確実なものがトラブルだ。:トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』【書評】

【さかもとの書評】

弱さを抱えながら生きていく大人たちのキラキラしない人生「コールド・スナップ」トム・ジョーンズ(訳:舞上王太郎)

今回は直木賞も受賞した森絵都の短編集です。

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大人って案外思い通りにならないけど、それを受け入れて楽しむ力もある

<あらすじ>
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

感想:★★★★

表紙的にも、作家的にも、爽やかで書くの上手いんだろうな~と思って手に取った今回の本。

読み進めていくうちに、誤解していたことに気付きました。

一つ一つの話が適度に特殊で、でも読みやすく、静かに重い

芯の部分が骨太なものばかりで短編なのに読みごたえがありました。

個人的には仏像の話(鐘の音)と野球の話(ジェネレーションX)が好きでした。

それぞれの感想です。

器を探して

有名パティシエの右腕の女性の玄人苦悩と、人生と。

家庭か、仕事か。

どっちも選べるはずなのに、どちらかを犠牲にしなければいけない時もある。

自分だったらどうするだろうか…と思いながら頭の中は岐阜に飛んでました。

仕事をしていると、自分を押し殺すことに慣れてしまうことが多々ある。

それに慣れると、自分の意思を引っ張り出さなくてはいけない時にとても大変な思いをすることになる。

男が去った後のヒロミはまるで脱ぎ捨てられた靴下のようにぐったりとして、活力のかけらもなく、顔色もくすんで髪もつやをなくし、とても人前に出せたものではないけれど、弥生にはそれがヒロミの最も人間らしい姿に思えた。
P30 器を探して

振り回す女と、振り回される女。

この役割は、もう女になって浅い学生のうちからもう別れているよな~と思いながら読みました。

仕事の中で見つけるキラキラした瞬間は、本当にちゃんとキラキラしているのに、それが過ぎ去るのもはやいんだよなぁ。

犬の散歩

里親探しのボランティアをしているスナックの奥さんの話。

ボランティア、ことさら犬なんて、生命の関わることに関しては生半可な覚悟ではやっていけないことがよく分かるから、なんとなく身構えて読んでしまった。

何となくキラキラした主婦の人生より、向き合う相手がいる、広がりを持つことも、人生を変えてくれる。

ほっこりするハッピーエンドでほっとする話。

守護神

社会人大学生のレポート代筆のプロと文学大好き少年(?)の話。

好きなのに、貫けないもどかしさが、よく分かる気がして読んでてもじもじする話でした。

鐘の音

印象深い話でした。

己のナルシズムと可能性を捨てきれない大人という意味では、言葉を使って食べて生きたいと思いながら営業ばかりしていた自分と少し重なりました。

半端になんでもできると、変に回り道して諦める事ができなくなる

やめたい、やりたい、そのターニングポイントっていつかどこかで来るものだよなぁと、そのきっかけになる話を読みながら思いました。

面白かった。

ジェネレーションX

野球をする旦那にも読んで欲しいと思った話。

願わくば、男のこういうバカみたいなところは持っていて欲しい。

自分が幼い言い訳に使う少年心なんかじゃなく、仲間とか、好きなことと真っ向から向き合う気持ちを。

風に舞いあがるビニールシート

外資系投資銀行に勤めていた主人公が国連職員になり、恋に落ち、結婚したけど相手はフィールドでの仕事を愛いする仕事人間だった話。

結婚は破たんし、どこにもいけない思いを抱えたまま、元夫がなくなって抜け殻になってしまう。

私も主人公寄りだったから、仕事中心すぎて、家庭を持つことに対して向き合ってくれない元夫を見ててハラハラしました。

もう君は聞き飽きたと思うけど、僕は色んな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と飛ばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになって飛ばされていくところを、さ。老人や女性や子供、それに生まれて間もない赤ん坊たちだ。誰かが手を差し伸べて助けなければならない。どれだけの手があっても足りないほどなんだ。だから僕は思うんだよ、自分の子供を育てる時間や労力があるのなら、すでに生まれた彼らのためにそれを捧げるべきだって。それが、富める者ばかりがますます富んでいくこの世界のシステムに加担している僕らの責任だって」

P290 風に舞いあがるビニールシート

宗教観の違いかもしれんけど、そう考える人もおるんやなって目からうろこでした。

恋にはスパイスや相性や勢いが必要やけど、結婚には自分の正義や、正しさ、幸せの軸のすり合わせが必要なんやなって。

でも、元夫がいいたいこともわからんでもない。
自分はそうは思えないけど…。

大人が大切にしたいものを見つけるのは難しい?

全部の話を読んで、不器用やけど話の奥底には自分にとって大事やけど、色んな言い訳をして蓋をした感情があるのが共通してたかなぁ。

それに気づいてドキッとしている自分もいました笑

本て、読書ってやっぱり面白い体験やなぁ~

オトコノホンノ読ミ方

つぶあんさんはどう読んだのかな…

男目線の感想も気になる!

というわけで、オトコノホンノ読ミ方、つぶあんさん(つぶログ)の書評はこちらからどうぞ!

風に抗い、このすばらしさがずっと続きますように。:森絵都『風に舞いあがるビニールシート』

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