佐渡を代表する芸能のひとつとなっている鬼太鼓は、現在では100をこえる保存会によって受け継がれています。鬼太鼓は相川で発生したと考えられており、鬼の舞方や太鼓のたたき方は地域によって違いますが、だいたい次の3つに分かれます。
【鬼太鼓の相川発生説】
安永年間(約230年前)の記録では、鬼太鼓は相川の金銀山で始まったものとなっています。金銀山で働く人々(坑夫)たちが、タガネ(鉱石を掘り出す道具)を持って舞ったのが始まり、ということです。また、同じ安永年間の記録には、鬼太鼓の鳴り物の禁止を鉱山大工が破ったことが見られます。
これらのことから、江戸時代の中頃に鬼太鼓が発生したと考えられます。しかし、その舞い方が現在の鬼太鼓と同じなのかどうかは分かりません。
【相川系鬼太鼓】
「豆まき系」ともいわれるこのタイプは、相川から佐和田・真野湾地域に見られます。鬼面をつけた者が舞うのではなく、「おきな翁」の面を着けた者の舞が中心になり、鬼は登場しないか、なぎなた薙刀 などを持って脇にひかえています。この系統の鬼太鼓は、天保年間(江戸時代後期)に書かれた記録の挿絵に登場します。
【国仲系鬼太鼓】
鬼と獅子がからむもので、鬼太鼓として紹介されている一般的な形です。相川系とは違い、悪い獅子を鬼が退治するという、悪魔払いの鬼になります。このタイプは、享保年間(約270年前)のころ、能楽で有名な吾潟の本間家の祖先(本間右京清房)が、鬼舞の振付をして牛尾神社の祭りに奉納したのが始まりとされています。 潟上系ともいわれています。
太鼓打ちの方は、安政年間(約150年前)に潟上の関口六助という人が、信濃や京都で学んだものが基本となっているようです。この系統は、佐渡の国仲地域一帯に広がっています。
【前浜系鬼太鼓】
太鼓と笛に合わせて2匹の鬼が向かい合って舞い、合間に面を着けない子どもたちなどが助っ人として踊ります。また、ドウソ(ロウソ)という鼻切り面を着けた者が口上を述べたりします。
これらの鬼太鼓は、山伏によって伝えられたといわれており、番楽(山形県などに残る山伏神楽)の系統を引くものと考えられています。
佐渡の前浜や赤泊などに広がっています。
このような系統を引く鬼太鼓ですが、戦後にできた保存会も多くあります。また、特に夷(湊)の鬼太鼓のように、昭和に入ってから洋舞踊家の指導を受け、時代にマッチした舞い方に変わったものもあります。舞い方や太鼓のたたき方などは、受け継ぐ世代によって少しづつ変化していくこともあります。
2.鬼太鼓とお祭りの意味
鬼太鼓は、現在では佐渡各地のお祭りに登場し、その年の豊作や大漁、家内安全を祈りながら、家々のやく厄をはらうために行われる芸能です。鬼が家々を回るのはそのためです。家々では鬼に厄をはらってもらうために、鬼太鼓の団体(鬼組)にご祝儀を渡します。ふつうは男性が鬼を舞い、女性はできないところが多いようです。
お祭りの日は地区によってちがいますが、4月15日を中心とする春祭りと9月15日を中心とする秋祭りに大きく分けられます。春祭りは田に稲を植える前に行われ、秋にたくさんのお米がとれるように神様に祈ります。秋祭りでは、その実りを神様に感謝します。また、農家の少ない市街地では神社の祭りの日に合わせてお祭りを行うところもあります。ただし、鬼太鼓や獅子などの芸能を行わない地区もあり、神社の祭りの日にお参りし、家でごちそうを作って家族で祝います。
3.鬼面について
鬼太鼓には、大きく分けて口を閉じた面を着ける「オス」の舞いと、口を開けた「メス」の舞いがあります。神社・お寺のこまいぬ狛犬 や仁王さんと同じように、「あ」「うん」(物事の始まりと終わり)の意味があります。面やかつら(髪の毛)の色も、オスとメスで分かれている場合もあります。
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【さかもとみき】
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