移住について考えている時、たまたまそろそろ絲山秋子読みたいな~と思って図書館で借りた一冊。
頭の中にどんぴしゃでぐぐっと入り込んで読めました。
舞台は群馬。
あらすじ
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんらとの交流を通し、かれは次第に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起き―。季節の移り変わりとともに揺れ動く内面。社会の本質に迫る。滋味豊かな長編小説。
感想:★★★
外からやってきた新しい空気や水の様な移住者に惹かれる地元の人。
新しくできたゆるいコミュニティ。それが小さな色恋沙汰で一変していく。
主人公は揺れながら人に深入りをするのが煩わしいと思いながらも、
深入りできる人をどこかで探している様な妙齢男児。
今現在の愛とか可愛いとか忙しいとかいがみ合いだとかそういう重たいものが詰まっている所は密度が濃い。今どう思ったとか今日何があったとかそういう要素がぎゅうぎゅうに詰まった場所が、おれは苦手なのだった
P164
わかる。
私も逃げたくなることがある。
でもなさ過ぎると求めてしまう。
この0にも100にもならんものの間で長いこと揺れる。
もう少しすると、いい感じに丁度を知れるのかなぁとも思う。
金か?
おもしれーこというなあこの女
婚活ってなんだ婚活って
おれと付き合っていて同時に婚活して
うひゃあ、こんなん、ついていけねーぞおれ
中略
さっきまでアンアン言っててこれかよ
くだらねえ、笑える
中略
もうちょっとまともな女だと思ってたんだけど、めちゃくちゃだなあ
中略
そもそも、この子のことなんて何も知らないんだ。好きな色とか行ってみたい国とか血液型とか、そんな表面的ないくつかの情報以外は
ふいに冷たい風が流れ込むように、笑いがひっこんだ。
P185
アラサーあるある。
現実的になった女は男からすると理解不能。
条件が出ずに恋愛結婚出来た人は本当に幸せなのかもしれない。
知らなくていいこと、考えなくていいうちに道を選べるのも、運かもしれない。
アラサ―になると、機械も羅針盤もついてないいつ出向するかわからん船を待つのも大変ながってねーって女の気持ちもわからんでもないけど、恋人として感情で話をすれば、「めちゃくちゃだなあ」になる。
大人になるって、汚いって言われるのが、その理由が解る位になってしまったなー。
地方で生きてることは罪でもなんでもない。誰にも後ろ指を指されてはいない。それなのに勝手に罪悪感を持つのはやめちまえばいいんじゃないか
誰かを抹消してしまうような薄情さと、よそ者が持つ新しさを考えなしに賛美することって、根源的には同じなんじゃないか
何もかも表と裏で、同じことなんじゃないか
不在も実在も、どうでもいい、みたいな
何を見ても言われても、いやおれどうでもいいですから、というのを本心から言うって
まじかよ、おれそんなことできんのかな
P251
地に足がついていない人の気持ちがわかりながら、居場所を探す私としてはすごくすうっと入ってくる一冊でした。
力を入れて生きたくない。
でも次々色々な気持ちがでて来る。
そして、それに揺れる。
この流れは、流れて生きていく限り消えんもんながかもしれん。
それにも慣れたら、私はどこにいくがやろうな。
良書でした。
続いて絲山秋子作品、もう一冊読みます。
楽しみ。
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