好きな食べ物が終わるとき、「ああ、もう終わってしまう」と悲しい気持ちになることはありませんか?
高橋源一郎の小説は私にとってそういうものです。
「ああ、読み終わりたくない…でも止まらない」
幸せと、後悔しそうな気持ちが押し寄せてくるけど、我慢が出来ない感じ。
小説って高いのでなかなか買えないですが、好きな作家のだけは躊躇せず買ってしまう。
コレ
★★★★
それにしても最近、源一郎さんの本の紹介は「最後の書」という結びで紹介することが多いな。
今回は、「著者が『動物』たちへ贈る最後の書、刊行!」
ふーん。
ただ、面白かったです。
あらすじにまとめられる程スムーズな物語ではありません。
正直、わけがわかったもんじゃないです。
でもこれを面白いと感じさせるところが、ただただ文豪と言われる所以です。
なかなかまねできません。
日本語変態。
言葉を知り尽くしてで遊ぶ大人はかっこいい。
音や酒の様に、酔わされます。
作風はいつも通り、
最初、設定を決めてきちきち書いていく
舞台で始まる、野生動物VS動物園の動物みたいなにおいをさせて細かく描写している
⇓
飽きてちょっとちゃけて書いていく
ここらへんで不妊に悩んでいるパンダ(実際パンダは妊娠しにくい)や、結婚生活に悩むチーターやカンガルーシロクマが出てくる。
動物の奥さんも大変よ的な流れ。
パンダさんは、なにかが足りない気がしていた。そのなにかというのはもちろん、赤ん坊だった。カンガルーさんにも、チーターさんにも、シロクマさんにも、子どもがいる。
なぜわたしにはいないのだろう。
パンダさんは、基礎体温をつけ、もっとも妊娠しやすい日に、セックスすることにした。中略
セックスの時間はあまり長くはなかった。それは、パンダさんが、セックスそのものにあまり興味なかったからでもあるが、「激しいセックスをすると妊娠しにくい」とどこかに書いてあるのを読んだからだった。
夫が射精し終えると、パンダさんは、「精液が流れ出ないように」、腰の下に枕を誣いたり、ベットから降りて逆立ちしたりもした。
夫は、ベットの横の壁に向かって逆立ちしている裸の妻を見て一瞬「気がくるっているのではないか?」と思った。だが、それを口に出して言うことはなかった。「家庭というものは」と夫は思った。「妻が管理すべきもので。 雄である自分があれこれいうものではない。そして子どもというものは、まさに、妻が管理すべき専権事項なのだ」P57
⇓
でっかいことが起きる、物語はすでに崩壊
今回は「日本政府が開戦を宣言する」
「正確に言うと、銀河連邦が、天体1262121を攻めるのよ」
「理由は?」
「決まってるでしょ。環境汚染、汚職、不倫、甘いものの食べ過ぎ、美容整形、派遣社員への差別、ニート、鯨の絶滅、こんなものを放っておいて、宇宙全体に広がったら宇宙そのものの破滅よ」P126
⇓
詩教室が始まる
ペンギンさんたちの詩がいい感じに沁みてきて、ふふふと笑いながら文豪の凄みを魅せられる感じ。
※この人の詩に対する執着はすごいなぁといつもながら感動してしまう
⇓
詩教室がヒートアップし、言葉について掘り下げ、遊んでいく。
面白いから、パターン化されてももうなにもいうまい。
ただただ訳が分からないが、気持ちよく読んでしまうので、
もうこちらも意味が解らない。
⇓
ぶっ壊して、物語は終わる
よく判らないまま、わけのわからない哀愁や、衝動や、高揚を残してぶつ切りで終わります。
意味が解らないのに、面白い一冊。
たまに食べたい珍味の様です。
流れがわかっちゅうのに、また手を出してしまう。
中毒性がある。
新書が出たらまた即買いするでしょう。
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