定期的に図書館で手に取るお気に入り作家の一人になったのですが、
最近読んだのはコレ。
★★★★
この見出し的にも、いろんなことでもんもんとしている中高生に読んでほしい。
で、30目前の私が読んでもおもしろかった。
すごい。
終始夢の中にいる様な読み心地でした。
特にaerが好きでした。
冒頭から引き込まれました。
そのしろものはとておやわらかくて垢がたまりやすくて熱くてよくわめくものだった。しろものが出てきた時は苦しくて痛くてずるっとしていて時々は途中で眠ってしまってようやく出てきたらあんまり紫色でみにくいのでがっかりした。
are P97
他者に向けた装飾された幸せアピールではなく、
女が母に変化するとき、どういうことがその人の中で起こっているのかということにとても興味があったので、
これはすごくためになったというか、いいタイミングで読んだなぁと思いました。
男を好きで好きで好きで好きでしょうがないのである。という気持ちに戻ろうとしたけれど、うまくゆかなかった。すぐそこにいる男である。今も嫌いではない。どちらかと決めるならば、「好き」寄り。でも狂ったみたいに好きで好きで好きでしょうがなかったあの気持ちは、拭い去ったように消えている。
体がコドモをつくることを欲する。そのために男と恋愛するよう体がしむける。狂ったように男を好きになったり、とけあって一つになって離れまいとちかって二人の間をへだてる薄い一枚の避妊具でさえ邪魔にする。コドモができる。するととたんに男は必要ではなくなる。
ほらやっぱり、どうぶつじゃん!
かんたんすぎて、涙がでてくる。
are P104
恋愛をして、自分が幸せと思った時に、他者を産み出す。
矛盾しているように思えるのに、人はそうやって家族をつくっていくようプログラミングされているし、
それで幸せを感じるようにできているのが人の考える「わかりやすい幸せ」以外にもあるということは、
30になって結婚しても不思議だと思う。
頭はぼんやりしてきた。
自分の体がどうぶつであることがわかったので、ぼんやりすることにも必然性があるのではないかと疑った。どうぶつの体に、無駄なことじゃ一つもない。
ぼんやりして、ただただしあわせなのである。
are P104
よく結婚をコスパが悪いというけど、
確かに利害関係、自分一人が、
もしくはパートナーと生きていくようになってもその効率が悪くて自分が贅沢できなくて、
我慢しながらも子供が2人、3人ほしいとかそういう風に思い、
選択する人が多いのはなぜだろうとは私も思う。
「人間的に満たされる」ものと
「動物として満たされるもの」が別に存在しているとしか考えられない。
この地球におりたった自分に与えられた使命。宇宙の平和を守るとか。地球の生態系の平衡がやぶられぬよう見張るとか。世界の飢えた子供たちを救うとか。自己をつきつめて生きてゆくことの意味をただすとか。
たしかそういう類のことを前は考えたりしていたんじゃなかったっけか。
今は幸せすぎて、何も考えられないのだった。腹の中にコドモがいることが、多幸感の原因なのである。それはもうはっきりしていた。アカシのせいでしあわせになってしまった。しあわせの実体はないのに。
are P106
セックス、妊娠、出産、子育てがぎゅっと詰まったもので、変にキラキラしてないし、夢の中にいるようなもどかしさを感じられる、良い意味でふわふわした一冊でした。
いやー、川上弘美は読破したい作家のひとりになりました。
また、お休みに図書館に行くのが楽しみです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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