死と向き合い、死者の幸福を祈り、死を乗り越える少女の物語「鳥たち」よしもとばなな

よしもとばなな

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ、8本目!

一緒にコラボしてくれているのは本のプロつぶあんさん(つぶログ)です。

前回は女のメンドクサイ関係に引き込まれるコチラの小説。

飛鳥井千砂『そのバケツでは水がくめない』:バケツからこぼれ落ちるような感情【コラボ書評】

今回は自分が選んだ、よしもとばなな「鳥たち」です。

久しぶりのよしもとばなな、ドキドキィイイ!

スポンサーリンク

重い過去を背負った若い少女が大人の階段を一歩登る物語

<あらすじ>
それぞれの母親を自殺で失った大学生のまことパン職人の嵯峨。まこは日々、喪失感に怯えては嵯峨の子を欲しがり、そんなまことを嵯峨は、見守っている。お互いにしか癒せない傷を抱えた二人。少しずつ一歩ずつ、捕らわれていた過去から解き放たれ、未来へと飛び立っていく。大人になる直前の恋と、魂の救済の物語。

感想:★★★

主人公が、ウザすぎて序盤読むのが辛かったです。

悲劇のヒロインって、ほんとウザいんですよね笑

でも序盤、高知のフルーツトマトを称賛してて、旅行で高知くる描写がちょっとあって気分変わって読みました笑

しかも、幼少期の舞台であるアメリカのアリゾナ州のフェニックスのツーソンにある薬物更生施設に学生時代に行って、不思議な体験(インディアンの儀式)を私自身したこともあるので物語がぐっと近くなりました。

よしもとばななを読むときってそういう不思議なシンクロとか場所へのリンクがあっていつも不思議な気持ちになります。

とはいえ、自分で選んどいて、すっごいイライラしながら読んだんですが、後半は徐々にイライラする理由が見えてきました。

キーパーソンである教授の視点とか読者と主人公を導く人がいるのも良かったな。

よしもとばななを読んできた身としては、「ハチ公の最後の恋人」「キッチン」「ハネムーン」が頭をかすめるので、結果、それらを読み直したくなってしまう一冊になりました。

これは、母になって私の読み方が変わったのか確かめたい…。

人の死と愛の不在は人を混乱させる

終始主人公まこちゃんの悲劇のヒロイン加減がすごかった。

まあ、物語の背景をみると、親や大事な人を自分が無力な頃に、目の前で無くしてしまうという抗えない人生の渦に巻き込まれてしまったらそうなるのかなとも思う。

しかも若くて、弟みたいな、親や大切な人に託された大事な人と一緒ならまあ、そうなるのかも。

うーん。

うーん。

うーん。

でもこいつ、自分大好きやな…っていう気持ちがすごい見えて、そこがもう、ウザかった。

というか、世界が一回終わったみたいになったら、見るものも、持つものも、制限しようと思うからそうなるのかなと何回か理解しようとしたけど無理やった。

でも、後半、ちょっと腑に落ちる描写があった。

「私は、なにをやるにも中途半端で、いつも考えてばかりで少しも理想には近づけず、恋人のいい奥さんや子どものいいお母さんになるくらいしかできないと思うんです。それしか向いていることはないんです。
 彼はほんとうのパン職人になれる人だし、妥協なく畑もできる。私はお母さんゆずりで、なんにもできないんです。うじうじ悩んでいるばっかりで。でも、だからといってなにもしないのは、きっといつか嵯峨の足をひっぱるから。私がこうしてなにか他のことをしないと、かれにとって私は重すぎるように思うんです。」
P171

ああ、やりたいこと&野心が基本的にはなくて、他力本願ちゃんなんや、この子。

だからイラっとするんやな、と。

しかもこういう子は実際おる。

それこそそんな悲劇を背負ってなくても。

でも、何か愛に飢えた経験のある子に多い。

これを、弱いというのか、ずぶといというのか、不思議ちゃんと呼べばいいのか、いつも私にはよく分からん。

関わると、与えても与えても、「それじゃない、もっとほしい」という感じになるので、だんだんフェイドアウトしていってしまう子。

だから、苦手なんや。

しかも、その弱さを隠すために、つんけんしている。

たまに執着に狂気を感じる。

生きる軸が、ズレている子。

まこちゃんは、しがみつくことのできる嵯峨がおるきなりたっちゅうよね。

運命と何度も言いながら、離れられないと言いながら、離れるのが怖いという。

物語の後半にもあるけど、それが失ったものの大きさやイメージ、欲しい時に与えられなかった反動なのかもしれない。

底から這いあがって見える明るい「これから」

主人公のまこちゃんは15歳このころからずーっとあかちゃんが欲しくて、毎月生理が来ては落ち込む。

まだ大学生やのに、赤ちゃんを切望している。

それは死んだ両親たちの生まれ変わりを自分が生み出して、あの頃を取り戻そうとしているから。

大事な思い出と、一番ショックな思い出が近くて、大好きなのに届かない悲しさを抱いて生きる2人なんやけど、実は嵯峨の方がたくましくて、自分はおいて行かれそうなのにいつもまこちゃんは焦っている。

嵯峨は見放したりしないのに。

話の描写はまこちゃんメインでめっちゃ強がって平気そうにして、たまにハッと「私…」みたいに泣くからウザいけど、要は不安定で寂しい思いと、なくすことの恐怖にいつも囚われている。

後半、教授の言葉でスイッチが入り、ずっと待ってくれていた嵯峨と前を向いて、未来の二人の話をしているまこちゃんはちょっと強くなっているなと思った。

そして、私もほっとした。

そんな感じで結構、感情移入して読んでました。

悲しみを抱いて生きるって難しい

今までのよしもとばなな作の中でも大事な人を失う子は多かったんやけど、その中でも今回のまこちゃんはダントツで子どもっぽかった気がする。

それか、過去の子は強がるのが上手かったのか。

切り替えがうまくいったのか。

いつも、悲劇、運命の男パターンは結構あるんやけど、そしてそういう話は好きやけど、今回は…うーん。

私の感性が変わったのか気になるので、過去作品もまた読んでみることにします。

よしもとばななの小説は付き合いが長いし、深いなー。

オトコノホンノ読ミ方

というわけで、この女のめんどくさ女女しさ前回の本作、男性がどう読んだかすごく気になる!笑

オトコノホンノ読ミ方、つぶあんさん(つぶログ)の書評はこちらからどうぞ!

残酷なまでに、厳密に。よしもとばなな『鳥たち』:【オトコとオンナのホンノ読ミカタ】

スポンサーリンク
スポンサーリンク
よしもとばなな

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です