さよならドビュッシーを読んで、あの引き込まれて頭の中に広がる景色と、どんでん返しで魅了されたのを思い出し、同じ作家さんの本を見つけたので手に取りました。
テイストが違う感じなのでどんなものかなーと思って読み進めましたが…
めっちゃ仕掛けありそう~からの引き込み方が今回もヤバかったです。
こんなに生活保護の許可が下りてほしいと思うことはなかった
<あらすじ>
仙台市の保健福祉事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。
一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。
男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か? なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?誰が被害者で、誰が加害者なのか──。
怒り、哀しみ、憤り、葛藤、正義……
この国の制度に翻弄される当事者たちの感情がぶつかり合い、読者の胸を打つ!第三の被害者は誰なのか?
殺害された彼らの接点とは?
第三の被害者は?
本当に“護られるべき者”とは誰なのか?
感想:★★★★★
面白かったという感想を言うのも不謹慎になりそうに心に重くて冷たい塊の残るような話。
善人の死から始まった過去を紐解く物語はさすがとしか言いようのないクライマックスを迎えます。
長めですが、一読の価値がある本でした。
お金がないと生きていけない
社会的弱者になった時、どうするか、どうなるのか。
生活保護ってお金貰えていいなと思うところが過去にありましたが、それは想像力のなさが与える楽観的展望でした。
というのも、私は一度会社を辞める時にうつっぽくなり、
「ああ、このまま病名ついて、薬貰うようになったら、そこから抜け出すのって大変やな。
大義名分の言い訳をもらいに立ち向かうより、逃げよう」
と思って軌道修正した過去があります。
その時感じた、「はたらけなくなったらどうしよう」「各種支払いで貯金もうない」っていう絶望感を思い出しました。
人は、壊れると簡単に生きるのが難しくなる。
で、壊れない人間はいない。(年齢的なものも含めて)
お金を稼ぐというのは義務なんや…それから一度落ちたものにはこんなに容赦ないんや…
ちょっと休んで、転職するときも同じように大変でした。
簡単なカウンセリングや、就職できるような支援はあっても、底にタッチした時に1人で生きていけなくなるという事実と、よわっているけど自分である程度まで持ち直さないといけないという雰囲気、全面的支援ではなく、あくまで補助として制度がある、だから前向きじゃなければここから出られないという、あっちとこっちの間を見た気がします。
たまたま私は運がよくて、旦那と一緒に住めて、最悪親もいるし…という環境でしたが、セーフティーネットがない人は絶望してしまうだろうことはたやすく想像できました。
私はあっち側にいけなかったけど、弱者とよばれる一度壊れてしまった人や、ハンデを負った人にはそれなりの葛藤があり、制度を受ける受けないにしても地獄なのだというのを垣間見た気がします。
そういう背景も含めて、今回、高齢者の生活保護受給でありそうな話が、ずーんと胸に沈んで、暗く残りました。
公務員の善悪
善人が殺されるところから始まり、善と悪が交錯する中で、「悪」を最後までつかめないというのがこの物語のミソだったように思います。
数年前、公務員の友人が同じような担当をしていて、とても疲弊していたのを見ていたので改めて考えさせられました。
だから後半悪に変わっていく公務員を悪とそのまま受け止めもできなかった。
ただ、正義にはいろんな軸があって、生活もそれぞれの役割と別にあって…どこを悪にしたらいいか戸惑ってしまった。
ただ、悲惨な状態で人が亡くなった事実があって、それに対する善悪の所在は見えにくい。
色々考えさせられる一冊でした。
でも、これを読んで、本当にギリギリで生きているお年寄りや、働けなくなった人は、ちゃんと生活保護を受けてほしいなと思いました。
そして全然関係ないけど、中里七里さんって、30代くらいのきれいな女性作家さんと思ってたら、男性作家さんでした笑
祝!映画化決定!2020年3月28日現在
うわー映画化決まりましたね!
これは見てみたい。
佐藤健主演で瀬々敬久がミステリー「護られなかった者たちへ」映画化、共演に阿部寛
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