小説に出てくるオカマの女性らしさを尊敬してます、坂本です。
いつかオカマバーにいきたいなぁ…(ヒキタクニオ作品では魅力的なオカマも時折出てきます)
ヒキタクニオの作品はかっこいい男らしさとなまめかしい女らしさが混合するので、男女で読んだ感想がどう違うのか…
それが気になって今回の書評にはこれを選びました。
というわけで、今回の本はコチラ!
「人殺しパラダイス」ヒキタクニオ
“考えること”をやめていた俺にもたらされた女の啓示「赤い大きなアメリカ女」。シングルに舞い戻った三十男が溺れる冷え切った女の底知れぬ魔性「月光」。女を骨抜きにするホストが落ちた“心が読める”南の島の恋「人殺しパラダイス」…。人を殺すのは、いけないことですか? どうして殺らないんですか? 日常生活の中でこみあげる「殺意」のあれこれを描く、“心の闇”という名の秘境を探訪する注目作家の不道徳な短編集、全5篇。
感想:★★★★
この本は5つの物語で構成されています。
●赤い大きなアメリカ女
●月光
●畜生
●小岩さんの秘密
●人殺しパラダイス
で、個人的には人殺しパラダイスが一番心に残りました。
物語は、ホストクラブで1位だったアキラが貢がせてた女がやくざの愛人だったのでやばくなって身を隠すために旅に出るところからはじまります。
そこで「人々の心を読んでしまう」村人たちの住む面白い島があると知り、行ってしまう。
バリを訪問した時の緩い空気を思い出し、その思い出から頭の中に色のまぶしい情景が繰り広げられ、主人公のアキラが訪ねた架空の島の中にどんどん引き込まれていきました。
人間の言葉と心は全く違う
[aside]「神父はすぐに殺されるから」
「殺されるって、なんでまたそんなことになるんだ?」
「神父はうそをつくからだ。俺たちの言葉は心と同じだ。この島に嘘はない。島の外からやってくる人間の言葉と心は全く違う。中でも神父の言葉と心は一番ひどく違っている。だから殺される」
「心が丸見えだからな」
中略
「この島ではすぐ人が殺される。殺されるようなことを考えるほうが悪いとされてる。だからみんな用心して人と接している」
P205[/aside]
この物語で一番惹かれたのはこの、言葉と心が違うのが当たり前と書かれているところでした。
そう、そうなんだよね。
みんな使っているたくさんの言葉は心にもないことだったり、思っていることと違ったりしている。
言葉ってとても便利なコミュニケーションの道具だけど、いつのまにか心を置いてきていることが多い。
むしろ心を伝えるのが言葉のせいで、下手になってる。
心にもない言葉で自分に嘘をつき、心を隠してことをうまく運ぶ。
そのほうがうまくいくから、結局心の中で思っていたことや、我慢していたことはどんどん見えなくなり、心の本音を見失い、最終的に壊れてしまう。
この島に私が行ったら、どうなるのだろうかと考えるとゾクゾクしました。
言葉はとても便利な道具です。
だからこそ現代人は自分の気持ちを見つけるのに苦労してるのかなと思ったりもしました。
恋や愛でどれだけ本当の気持ちを相手に伝えることができるのか
[aside]「ああ、オレが今までに女にほざいてきた“愛してる”って言葉と女に注いだ愛情すべて足しても、ムティアラの俺を呼ぶ言葉と気持ちにはかなわねえな」
P229 [/aside]
テクニックや方法を知れば、相手に“好意”を伝えることはできます。
巷ではそんな方法が無数に紹介されているし、私も恋愛記事ではその好意を伝える、生む方法をまとめたりしています。
恋を成就させるというミッションに対してそれらは有効な手段だと思います。
私も、意味があると思って紹介しています。
https://sakamotodappantyu.com/archives/27314202.html
でも、気持ちを伝えるって、本当は一番大事だよな…
言葉で気持ちを伝えられるはずなのに、テクニックばかり覚えて、ことをうまく運ぶことばかり優先させて(実際そのほうが勝率がいいのだけど)気持ちはおいていきぼりにしてしまっているのかもしれない…
そんなことを思いました。
ほんとうは、心に思ったことを伝えるのは、めーっちゃシンプルで簡単にできることなのにね。
せっかく言葉をいっぱい使えるし、好きな人がたくさんいるし、大事にしたい家族もいるのでいい心の声は言葉を使って伝えていこうと思いました。
普段見えないドロドロした場面を垣間見る
私が本を好きな理由の一つはこれで、日記やブログだと自分と違う人を見つけると批判する人は多いけど、本は聖域ですよね。
どんだけ変態なことを書いてても、なんやこれっていう物語でも“作品”として完結している。
そう思うとくそどうでもいいことで日夜炎上しているリアルは大変だな~と思いました。
本は、聖域!笑
[aside]「人というものを動物として考えたなら生態系的には、とても弱くて簡単に死んでしまいます。拳銃で撃たなくても後頭部を拳銃の柄で殴るだけで本当は死んでしまうんですよ。しかし、実際に殺そうとするとなかなかうまく死んでくれないんです。何故だかわかりますか?}
「わかりません」
「殺す側の手が縮んでしまうんです。小さなときから人は『人を殺してはいけない』という教育を受けて、その教えが体にし意味ついているんです。恨みや憎しみだけでは、その一線を越えることはなかなかできません。不思議なもんで、最後に一線を越える助けになるのは、さっきのような偶然なんです。魔の時とでも言うんですかね。なにものかに取りつかれ、魅入られたようん体が人殺しに向かっていくんです」
P143.144(畜生)より[/aside]
特にヒキタクニオの作品は、アウトローな主人公やキャラクターがよく出てきて、またそれがとても魅力的だったり、人間的だったりしてキャラクターを好きになることが多いです。
癖があって、男っぽくてその男っぽさの中にはかっこよさやら弱さやら、慈悲やら、愛があふれている。
久しぶりのヒキタクニオ作品でしたが堪能しました!
オトコの読み方
15年前の本を一緒に読みましょうと提案したのに、素敵な書評を書いてくださったつぶあんさん、さすがです!
読書のプロつぶあんさんの書評はコチラ↓
小岩井さんのひみつが好きっていうところもつぶあんさんぽかったなぁ~
人の心の中のゆがんだ部分をサラッと読める良書
心の闇を抱えてもどかしいあなたにおすすめです。
いろんな人が一生懸命悩みながらぎりぎりで生きているのが少し励みになります。
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