空いた穴を埋めるのは男?トラウマの克服?親子関係?「夏の裁断」島本理生

夏の裁断

月に一冊、同じ本を読んでオトコとオンナでどう読み方が違うかを楽しむ書評コラボ。

本好き同士でゆるく、1年がすぎ、なお毎月一冊本を決めて読む。
自分では手に取らない本を読める読書好きにはたまらない企画です。

前回はつぶあんさんのチョイスで古川日出男を読みました。

いやー、久々に苦戦する読書でした笑

【オンナの書評】
https://sakamotodappantyu.com/archives/book-23.html

【オトコの書評】
https://ytkglife.net/collaboration-book-review-furukawa/

今回のチョイスは私!
大好きな佐藤友哉の奥さん、島本理生さんの「夏の裁断」。

目次

大人の女の葛藤と不安の着地点はどこ?白黒じゃない着地点も居心地がいいと思える物語

<あらすじ>
小説家の千紘は、編集者の柴田に翻弄され苦しんだ末、ある日、パーティ会場で彼の手にフォークを突き立てる。休養のため、祖父の残した鎌倉の古民家で、蔵書を裁断し「自炊」をする。四季それぞれに現れる男たちとの交流を通し、抱えた苦悩から解放され、変化していく女性を描く。書き下ろし三篇を加えた文庫オリジナル。

感想:☆☆☆☆☆

よかったっすぅ~久々に恋するひりひりとかドキドキとか、もどかしさとかを味わえました!

そして自由そうな主人公ですが年的にも共感できる感じで、尚ひりひりしました。

いい。
ぶっとび暴走恋愛じゃなく、身をゆだねながらも自分のあり方を模索してどこかにたどり着こうとしているところが良かった。

最初はふーんと思ってましたが、後半は気持ちわかりすぎてのめりこんでしまった。

いいなああああああああ。

形は曖昧でも安心できる相手のおる贅沢な状態。

恋の醍醐味。

もし結婚も子どももいらんかったらこんな恋愛あこがれる。

振り回すだけの男の心理にゴールはない

「答え、出ないよ」
え、と顔をあげると、彼が眼鏡越しに憐憫を浮かべて、繰り返した。
「答えを求めてもない。彼らはなにも考えてない。ただ、あなたを刺激して、自分のほうに意識を向けたら満足して気分で突き放すだけ」
思わず、でも、と反論していた。
「興味があるかもしれないって」
「思いたいよね。でも、そんなもんないよ」
分かりません、と言いかけて言葉をなくした。答えがないならなんのために、と言いかけた言葉も飲み込む。

夏の裁断 P79

このやりとり、私も何度もしたことがあって…。
自分自身の恋愛の時もそうだし、アドバイスする時もそう。

躍らす恋に意味はなくて、反応を見て消費しているだけ。

傷つきすぎて空いてしまった場所を埋めるには、質より量なのだ。

秋の通り雨 P145

ここもめっちゃ共感してしまった。

何もくれない人に惹かれて、大人だから何もないのに不安になる

結婚してから恋って本当に不安定だと思う。

満たされて、おなか一杯でも、離れて少し経つと飢えるように求めてしまう。

その不安を埋めるのが、言葉や、関係に名前を付ける理由なのかも。

「たしかになにもくれないけど、奪わないんです」
と一度だけ反論してみたら、冷静な年上の男の人に
「女性の時間を将来の約束なしに搾取しているのは、何も奪っていないとは言えないですよ」
と言われたので、それからきっぱりと彼の話をすることはやめた。

冬の沈黙 P203

恋は時に、奪い合いになる。
それが混ざるために必要なのかも。

でもそれがしんどい人もいる。
それで結ばれ続ける人もいる。

自分に丁度いい形の人を見つけるのはとても大変だ。

「でも、好きなんでしょう」
私は一拍置いてから、はい、と認めた。
「夕暮れがキレイで寂しくて愛しいのに似ている気がします」

冬の沈黙 P214

はあ、これとかなんてきれいな表現なんでしょうか。

においだったり、景色だったり、音楽だったりり、イメージってスイッチを入れてしまうんですよね。
相手を思い出す。

それがキレイであればあるほど、その恋は宝物になる。

いやーいいもん見せてもらいました。
もっと恋愛小説読もう!

オトコノホンノ読ミ方

恋恋した小説を選んでしまいましたが、つぶあんさんの書評はどんなかんじなのでしょうか。

オトコノホンノ読ミ方、つぶあんさん(つぶログ)の書評はこちらからどうぞ!

https://ytkglife.net/book-collaboration-shimamoto-rio/

結構主人公がめんどくさいタイプの女性だったからそういう意味でも難解かもしれませんね…。
出てくる男性も性に奔放で責任取らないフラフラタイプばかりだし…

男の読書にしては確かに重いかも!

次はどんな本を選んでくれるのかな~♪

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1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。 転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。 家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。 2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。
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この記事を書いた人

1986年高知生まれの五黄の寅年、3児の母。
転勤族の妻でうっかり新潟で家を買って辞令を震えながら待つ身。
家買ったら転勤のジンクスに負け、両親、義両親に続き旦那が本州から離脱。
2023年4月から「絶対に倒れてはいけない3人ワンオペママ」ライフがスタート。鼻血。

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